医学賞に関するお知らせ
第30回慶應医学賞授賞式・受賞記念講演会・シンポジウムを開催しました
2025.11.27
第30回(2025年)慶應医学賞授賞式および受賞記念講演会が2025年11月4日に信濃町キャンパスの北里記念医学図書館2階北里講堂にて開催された。本年はプリンストン大学化学・生物工学教授のクリフォード・ポール・ブランウィン博士が、授賞研究テーマ「細胞内の液―液相分離の発見」によって受賞。イェール大学医学部免疫生物学スターリング教授の岩崎明子博士は、授賞研究テーマ「新型コロナウイルス感染症に対するヒト免疫応答の解明」によってそれぞれ受賞した。
授賞式は、慶應義塾ワグネル・ソサイエティー・オーケストラの演奏が来場者を迎え入れる中で幕を開け、サンペトラ・オルテアBio2Q特任教授の司会進行により開会された。冒頭、慶應医学賞審査委員長の佐藤俊朗医学部教授から、選考過程の報告があった。今年の慶應医学賞は、昨年末から準備を開始し、今年の1月に世界中の研究者や研究機関の長など数千人から推薦を募り、122名の候補者に対し5回にわたる厳正な審査を経て、8月7日の最終選考会で両博士が選出されたことが報告された。
次に、伊藤公平塾長から両博士にメダルと賞状、賞金の目録が授与された。伊藤塾長は祝辞の中で、両博士の輝かしい功績を称えるとともに、本年の選考関係者への感謝を述べ、慶應医学賞が今後も医学と生命科学の発展を通じて人類の進歩と幸福に貢献できると信じている、と語った。続いて、武林亨医学部長が祝辞を述べ、本賞が第30回という節目の年を迎えられたことへの感謝と、医学部の今後の展望について話し、受賞者の研究に対する姿勢やその業績に触れることは、研究者や学生にとってまたとない貴重な機会となる、と結んだ。
授賞式の最後は、受賞者の挨拶で締めくくられた。両博士は、受賞の喜び、これまでの研究の経緯、そして関係者への深い謝意を述べた。ブランウィン博士は、今回の受賞は、国、文化、専門分野を超えた協力を通じて人類が直面する課題に取り組むという、私たちが共有する責任を改めて強く認識させてくれるものだと語った。岩崎博士は初の日本出身女性として慶應医学賞を受賞したことに触れ、長年の研究を支えてくれた家族や研究仲間への感謝の意を述べた。
続いて受賞記念講演会が行われた。ブランウィン博士は"Living Droplets: Liquid-Liquid Phase Separation in Cell Physiology and Disease"と題し、細胞内の液―液相分離を駆動する物理的原理を解明する研究と、現在進行中の研究について発表した。岩崎博士は"Advancing Understanding of Human Immunity to COVID-19"と題し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病原性メカニズムを裏付ける主要な知見に焦点を当てるとともに、この分野のさらなる進展に必要な今後の研究の方向性について語った。講演会は来賓、教職員、学⽣など約100名の聴衆が聴き入り、それぞれの講演後に寄せられた複数の質問に両受賞者とも熱心に回答し、活発な議論が交わされた。
第30回慶應医学賞授賞式・受賞記念講演会の翌日には、受賞記念シンポジウム"Breakthroughs and Insights in Immunology: A Journey of Scientific Discovery"が開催された。その中で、岩崎博士は"Career Pathways for the Next Generation of Scientists"と題した講演を行い、研究の魅力や研究者としての多様なキャリアパスがあること、そして粘り強く努力することの大切さを語った。未来の研究者、女性研究者が積極的に挑戦することへの力強いメッセージが込められた講演となった。世界を舞台に活躍し続ける岩崎博士の話に、会場にいた教員も学生も終始魅了され、皆が目を輝かせて聴き入る姿が印象的なシンポジウムとなった。
