慶應義塾医学振興基金


坂口光洋記念講座

医学部および医学研究科に「坂口光洋記念講座」を設置し、
医学および生命科学関連分野における研究・教育を推進します。

有力な若手研究者の育成を目的とする「新咸臨丸プロジェクト」のもと、
2025年4月から、多様な研究を推進する5名の「独立准教授」が
それぞれ主宰する5つの講座(研究室)を設けられています。

Current Laboratories
現在開設中の講座

シグナル探求学講座

准教授:志甫谷 渉

本講座では、細胞膜を越えて情報を伝える仕組みの研究に注力します。特に、薬の標的となるG蛋白質共役受容体(GPCR)に着目し、その立体構造と働きを明らかにすることを目指します。クライオ電子顕微鏡法は蛋白質の立体構造を迅速に決定できる技術であり、シグナル分子や薬が受容体にどのように作用するか可視化できます。また、次世代シーケンサーを活用することで、これまで見つからなかった物質と受容体の相互作用を発見し、その関係を構造と機能の両面から解明する新しい研究にも取り組みます。


分子生物情報医学講座

准教授:楠本 大

心不全・虚血性心疾患などの循環器疾患は高齢化社会においてその罹患数は増加傾向にあります。本講座では、循環器疾患の病的変化を新規の解析手法でとらえ、健康寿命延伸を目指した病態解明・治療開発を実行しています。特に、従来の医学生物学研究の手法に加えて、複雑な生体内を可視化するような生物情報学や、また人工知能を用いた画像解析などを組み合わせた領域横断的な研究開発を実行しています。細胞・組織レベルでの病的状態をAI画像解析、あるいは単一細胞レベルでの時空間的解析など様々な手法を用いて可視化し、新規の治療開発に繋げていきたいと考えています。


エピジェネティクス・幹細胞生物学講座

准教授:中谷 庸寿(つねとし)

受精卵は、たったひとつの細胞からすべての組織・器官へと分化が可能な能力、即ち「全能性」をもった唯一無二の細胞ですが、その内部で起こっている現象については、殆どが未解明のまま残されています。私達の研究室では、エピジェネティクスの観点から全能性の分子機構解明を目的とし、生命の本質を理解するための基礎医学としての研究を進めています。 また、哺乳類に特異的なエピジェネティック機構にも着目し、生物が進化する過程でどのようにゲノムインプリンティングを獲得したかの研究も行っています。


生体内イオン応答学講座

准教授:城(渡辺)愛理

本講座では、我々が見つけた重炭酸イオンを感知するGタンパク質共役型受容体(GPCR)の解析を中心に、in vitroの化合物スクリーニングから動物モデルを用いた病態モデルの解析まで行っています。さらに今後は、我々独自の視点として、pHも含めた酸塩基平衡への応答という観点からGPCRシグナル伝達を明らかにし、細胞応答や生理機能、病態における役割を解明していきます。


消化器生体機能多次元解析講座

准教授:筋野 智久

これまでの研究では様々な免疫細胞や腸内細菌が疾患を引き起こすことが知られていますが、一つ一つの細胞がなぜ特定の場所に、そしてどのような動態で制御されているかについては未だ明らかではありません。本講座では、患者さんの検体なども利用させていただきながら、1細胞RNA-seq, 空間オミックス解析, in vivo imaging systemを利用し疾患の発症機構の解明、治療応用を目指します。


Past Laboratories
過去開設の記念講座一覧

                                                    
講座名教授期間講座概要
オルガノイド医学講座 佐藤 俊朗 2018年11月
~2023年3月
オルガノイド技術を駆使した、疾患の発症機構の研究や再生医療への応用
システム医学講座 洪 実 2012年2月
~2022年3月
システム思考に基づく実験科学・情報科学的アプローチの開発、医学応用
機能形態学講座 久保田 義顕 2015年5月
~2017年7月
最新のマウス発生工学・形態学的技術を駆使した、新しい生命現象の解明
発生・分化生物学講座 須田 年生 2002年4月
~2015年3月
個体の発生、細胞の分化、あるいは組織の構築などの機序に関する研究
再生医学講座 福田 恵一 2005年4月
~2010年3月
幹細胞生物学、組織工学的手法を用いた心筋細胞の再生と細胞移植による心不全薬の研究