慶應義塾医学振興基金


第1回(1996年)受賞者

Stanley B. Prusiner 博士

Stanley B. Prusiner 博士

カリフォルニア大学サンフランシスコ校
医学部神経学教授・生化学教授
同校公衆衛生学部ウィルス学教授
1942年5月28日生まれ

授賞研究テーマ

「プリオンの発見とプリオン病の解明」

クールー病やクロイツフェルト・ヤコブ病、ウシの狂牛病の病原体であるプリオンの発見とその命名、それに引き続くプリオン病の遺伝的・生理的基盤の解明が高く評価された。

プリオンはスクラピー(scrapie)と呼ばれる病気のハムスターの脳から最初に発見・抽出されたが、感染症の病原体であるにかかわらず、従来の概念とは全く相反し、核酸を含まない蛋白質性因子であった。この知見は生物学に新たなパラダイムを与えたのみならず、アルツハイマー病など昔からよく知られているが未だに解決されていない神経変性疾患の病因論・病原論に貴重な示唆を与える可能性がある。プルジナー博士は評価対象テーマであるプリオン病の病因についての研究を中心に400編以上の優れた原著論文、総説を発表し、その功績により、米国国立アカデミー会員(1992年~)、ハーベイ・レクチャー(1992年)、アルバート・ラスカー賞(1995年)、エールリッヒ-ダルムステッテル賞(1995年)、ウォルフ賞(1996年)など数多くの名誉に浴している。

略歴

1968年
ペンシルバニア大学医学部卒業(M.D.)
1969年
3年間の国立衛生研究所(NIH)における兵役期間を除き、
カリフォルニア大学サンフランシスコ校に在籍
1974年
同校医学部神経学助教授
1981年
同準教授
1984年
同教授および同校公衆衛生学部ウィルス学教授に就任、現在に至る
1988年
同医学部生化学教授を併任

以上のデータは1996年12月現在のものである。

中西 重忠 博士

中西 重忠 博士

京都大学大学院 医学研究科
生体情報科学教授
1942年1月7日生まれ

授賞研究テーマ

「受容体分子の構造と機能に関する研究」

神経刺激伝達機構の分子生物学的研究、特に近年における知覚・識別、記憶、学習など動物の高次脳機能解明の試みが高く評価された。

中西博士は一貫して生体における情報伝達の分子機構、さらに生体機能がそれら情報伝達によってどのように制御されているかを自ら開発した独創的手法を用いて分子レベルで解明した。近年における視覚および嗅覚における外部刺激(光、臭い)の識別機構の解明、さらには脳海馬の神経可塑性(記憶の獲得或いは分別の基盤となるメカニズム)におけるグルタミン酸受容体の役割の解明などはその最たるものである。これらの成果は200編以上の優れた原著論文として発表され、その1990年以降の被文献引用回数は世界の最上位を占める。
また、これらの業績により、日本生化学会奨励賞(1977年)、朝日賞(1983年)、井上学術賞(1989年)、ブリストルマイヤーズスクイブ神経科学賞(1995年)、米国芸術・科学アカデミー外国人名誉会員(1995年)などの栄誉に輝いている。現在、知覚識別、記憶、精神活動など、動物の高次脳機能の解明において世界で最も注目されているリーダーの一人である。

略歴

1966年
京都大学医学部卒業(M.D.)
1971年
京都大学大学院 医学研究科修了(生理系医化学専攻)、
米国国立衛生研究所(NIH)、癌研究所(NCI)、
分子生物学教室(Laboratory of Molecular Biology) 客員研究員
1974年
京都大学医学部 医化学教室 助教授
医学博士号取得(京大医博)
1981年
京都大学医学部 免疫研究施設 第二部門
(現 京都大学大学院 医学研究科 生体情報科学講座)教授
現在に至る

以上のデータは1996年12月現在のものである。

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