第2回(1997年)受賞者
Robert A. Weinberg 博士
マサチューセッツ工科大学生物学
ホワイトヘッド生物医学研究所教授
1942年11月11日生まれ
授賞研究テーマ
「原がん遺伝子、がん抑制遺伝子とがん」
ワインバーグ博士は、癌遺伝子および癌抑制遺伝子の研究で本賞の受賞者としてふさわしい業績を挙げた。
まず1982年、ヒトの膀胱癌細胞で癌遺伝子rasが変異して活性化していることを初めて報告し、続いて1986年にはその欠損が原因で遺伝性腫瘍である網膜芽細胞腫を引き起こすRb遺伝子を特定して癌抑制遺伝子の実在を明らかにし、Rb遺伝子の変異が腫瘍発生にきわめて重要な役割を持つことを発見した。すなわち、癌発生においては癌遺伝子の活性化とともに抑制遺伝子の不活性化もその鍵を握っていることをヒトで証明した。
同博士の研究活動は、癌発生の遺伝子説における中心的遺伝子群である癌遺伝子と癌抑制遺伝子の研究領域において常に先端的であり、細胞癌化のメカニズムを解析する新しい時代を切り開き、動物についての分子遺伝学の広範な領域に波及効果をもたらした。
略歴
＜学歴＞
- 1960年-1964年
- Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA,
U.S.A. S.B. in Biology - 1964年-1965年, 1966年-1969年
- Massachusetts Institute of Technology Ph.D. in Biology
＜職歴＞
- 1965年-1966年
- Instructor in Biology, Stillman College, Tuscaloosa, AL, U.S.A.
- 1969年-1970年
- Postdoctoral Fellow, Weizmann Institute, Rehovoth, Israel
- 1970年-1972年
- Postdoctoral Fellow, Salk Institute, U.S.A.
- 1972年-1973年
- Research Associate, Massachusetts Institute of Technology
- 1973年-1976年
- Assistant Professor, Department of Biology and Center
for Cancer Research, Massachusetts Institute of Technology - 1976年-1982年
- Associate Professor, Department of Biology and Center for Cancer Research,Massachusetts Institute of Technology
- 1982年-present
- Professor of Biology, Department of Biology,
Massachusetts Institute of Technology - 1982年-present
- Member, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge
以上のデータは、1997年12月現在のものである。
谷口 維紹 博士
東京大学大学院医学系研究科
医学部免疫学教授
1948年1月1日生まれ
授賞研究テーマ
「サイトカインの構造と機能に関する分子生物学的研究」
谷口維紹博士は、インターフェロン（細胞やウィルスの増殖制御因子）のcDNAのクローニングに世界で初めて成功し、さらにインターフェロン系の調節因子であるIRFによる生体防御系の制御や細胞の発癌メカニズムの研究で世界をリードしてきた。
また、インターロイキン-2（IL-2：リンパ球活性化因子のひとつ）の構造解明および量産の基礎を世界で初めて確立し、サイトカイン研究を分子レベルの研究へと発展させることに大きな貢献を果たした。
さらにIL-2レセプターのβ鎖のクローニングやシグナル伝達機構の研究などで次々と新しいコンセプトを確立した。
これら谷口博士のサイトカイン（インターフェロンのように、細胞が作り、細胞同士の相互作用を媒介するたんぱく性因子の総称）の研究は免疫学の研究にはかりしれない進展をもたらしたが、その影響は免疫学にとどまらず、癌の生物学などにも及び、またインターフェロンのC型肝炎や慢性骨髄性白血病への有用性からも明らかなように臨床医学への貢献、社会的な評価もきわめて大きい。
略歴
＜学歴＞
- 1971年
- 東京教育大学理学部卒業（B.A. in Biology)
- 1978年
- チューリッヒ大学大学院博士課程修了
（Ph.D. in Molecular Biology）
＜職歴＞
- 1972年-1974年
- ナポリ大学理学部、ナポリ海洋研究所 奨励研究員
- 1974年-1978年
- チューリッヒ大学分子生物学研究所 研究助手
- 1978年-1980年
- 癌研究会癌研究所生化学部 研究員
- 1980年-1983年
- 同 主任研究員
- 1980年-1982年
- ニューヨーク大学医学部 客員助教授
- 1983年-1984年
- 癌研究会癌研究所生化学部 部長
- 1984年-1992年
- 大阪大学細胞工学センター 教授
- 1992年-1994年
- 大阪大学細胞生体工学センター 教授
- 1994年-1997年
- 東京大学医学部 教授
- 1997年-現在
- 東京大学大学院医学系研究科 教授（東京大学医学部兼任）
以上のデータは、1997年12月現在のものである。