慶應義塾医学振興基金


第6回(2001年)受賞者

Tony Hunter 博士

Tony Hunter 博士

米国ソーク生物学研究所教授

授賞研究テーマ

Srcチロシンキナーゼの発見と細胞増殖、癌化のメカニズムの解明

トニー・ハンター博士は1980年にSrcチロシンキナーゼを発見し、タンパク質のチロシンリン酸化が癌の発生に関与していることを世界で初めて証明した。この発見は多くの科学者の興味を引きつけ、それ以後多くのタンパク質チロシンリン酸化酵素、脱リン酸化酵素の発見につながった。さらに、博士はタンパク質チロシンのリン酸化による修飾が細胞内シグナル伝達、細胞の増殖に重要であることをあきらかにし、細胞増殖における役割とその異常による癌化のメカニズムに重点をおいた研究を精力的に行ってきた。今回の選考では細胞内情報伝達機構の研究の礎を築いた点が非常に高く評価された。

略歴

<Education>

1965年
University of Cambridge, England, B.A. (First Class Honours)
1966年
University of Cambridge, M.A.
1969年
University of Cambridge, Ph.D.

<Academic Position>

1968年-1971年
Research Fellow, Christ's College, University of Cambridge
1971年-1973年
Research Associate, The Salk Institute, La Jolla
1973年-1975年
Research Fellow, Christ's College, University of Cambridge
1975年-1978年
Assistant Professor, The Salk Institute
1978年-1982年
Associate Professor, The Salk Institute
1979年-1983年
Adjunct Associate Professor, University of California,
San Diego
1983年-
Adjunct Professor, University of California, San Diego
1982年-
Professor, The Salk Institute

竹市 雅俊 博士

竹市 雅俊 博士

京都大学大学院生命科学研究科教授
理化学研究所発生・再生科学
総合研究センター同センター長

授賞研究テーマ

カドヘリンの発見と細胞間接着機構の解明

竹市雅俊博士は、細胞間接着機構が全く不明であった時代に、卓越した洞察力から2種類の細胞間接着機構 (カルシウム依存性、カルシウム非依存性)を見い出し、その分子基盤としてカルシム依存性細胞間接着因子・カドヘリン分子群の同定を世界に先駆けて行った。さらにカドヘリンには多種類のタイプが存在し、同じカドヘリンを持つ細胞同士が選択的に接着することを明らかにし、従来謎であった細胞の選択的接着機構に分子的基盤を与え、多細胞体制維持機構の解明に大きく貢献した。博士によって切り開かれたカドヘリン分子群の研究は、細胞の増殖・分化、癌の発生と転移、自己免疫疾患、神経回路網形成など多岐にわたる生命科学の研究領域に大きなインパクトを与えている。

略歴

<学歴>

1966年
名古屋大学理学部生物学科卒業
1968年
名古屋大学大学院理学研究科修士課程修了
1969年
名古屋大学大学院理学研究科博士課程退学

<職歴>

1970年
京都大学理学部生物物理学科助手
1978年
京都大学理学部生物物理学科助教授
1986年
京都大学理学部生物物理学科教授
1999年
京都大学大学院生命科学研究科教授
1992年
岡崎国立研究機構基礎生物学研究所行動制御部門客員教授
1993年
京都大学理学部付属分子発生生物学研究センターセンター長
(併任)
2000年
理化学研究所発生・再生科学総合研究センターセンター長
(兼任)

医学賞受賞者一覧