慶應義塾医学振興基金


第10回(2005年)受賞者

藤吉 好則

藤吉 好則

京都大学大学院理学研究科教授

授賞研究テーマ

「極低温高分解能電子顕微鏡開発による膜蛋白質構造生物学の発展」

膜蛋白質やその複合体は、界面活性剤で可溶化して精製すると構造が変化したり変性してしまう傾向があるので、その構造機能相関の解明は良く知られているように困難を極めていた。藤吉好則博士は、膜蛋白質の構造を膜内に存在する状態で解析できる超流動ヘリウムステージを備えた極低温高分解能電子顕微鏡を開発した。この開発により、電子線による試料損傷を最少にすると共に、電子線回折像と電子顕微鏡像の効率良い取得を実現したので、膜蛋白質の高分解能構造解析が可能になった。藤吉博士は、水チャネルやアセチルコリン受容体、バクテリオロドプシン、さらには各種のイオンチャネルなどの膜蛋白質の構造を解析したが、これらはいずれも医学や生物学的に重要且つ技術的に高いハードルを持つものばかりである。博士御自身の強力なイニシアチブと情熱が相まってこれらの蛋白質の構造機能相関が解明されたのであるが、これらの解明が医学生物学研究に与えた衝撃は計り知れない。

略歴

<学歴>
1971年
名古屋大学理学部化学科卒業
1974年-1979年
京都大学大学院理学研究科
1979年-1980年
日本学術振興会奨励研究員
1982年5月
京都大学理学博士
<職歴>
1980年-1984年
京都大学化学研究所 教務職員
1985年-1987年
京都大学化学研究所 助手
1987年-1988年
蛋白工学研究所 主任研究員
1988年-1994年
蛋白工学研究所 主席研究員
1994年-1996年
松下電器・国際研究所 リサーチディレクター
1996年-
京都大学大学院理学研究科 教授
1998年-2003年
理化学研究所 播磨連携メンブレンダイナミクス
生体マルチソームチーム チームリーダー
2000年-2004年
産業技術総合研究所 生物情報解析研究センター
高次構造解析チーム チームリーダー
2003年-
理化学研究所 播磨連携メンブレンダイナミクスグループ 
グループリーダー
<主な受賞歴>
1988年
日本電子顕微鏡学会(現・日本顕微鏡学会) 瀬藤賞 受賞
2005年
産学官連携功労者 科学技術政策担当大臣賞 受賞

(2005年9月現在)

医学賞受賞者一覧