第13回(2008年)受賞者
Fred H. Gage 博士

Adler Professor,
Laboratory of Genetics,
The Salk Institute for Biological Studies,
U.S.A.
1950年10月8日生まれ
受賞者ウェブサイト
* ウェブサイト
(The Salk Institute for Biological Studies)
授賞研究テーマ
哺乳類の成体脳におけるニューロン新生の生理的役割の解明
中枢神経系の疾患や傷害は根治が難しく、成体哺乳動物においては、中枢神経系が一度損傷を受けると二度と再生しないと信じられてきました。ニューロン自体に分裂能がないことに加え、成体脳内にはニューロンを新しく産み出す幹細胞が存在しないためと長らく考えられてきたからです。ゲージ博士は、ヒトを含む哺乳類の成熟脳の特定部位では生涯にわたってニューロン新生が起こっていることを発見されました。空間認識や記憶の中枢である海馬の歯状回には、持続的に分裂し、ニューロンやグリア細胞を生む神経幹細胞が存在し、恒常的に新しい脳細胞を生み出していることが示されました。ゲージ博士の研究により、成体脳におけるニューロン新生が脳の構造と機能にとって重要な役割をしている事が明らかになるとともに、豊かな環境での生活や身体的運動によって成体脳ニューロン新生が活性化することも示されました。これらの研究は、神経系の再生医療実現への基礎となり、脳や脊髄の傷害および疾患に対する新しい治療戦略の確立に貢献すると期待されています。
略歴
- 1974年‐1976年
- NIMH Predoctoral Fellow, The Johns Hopkins University
- 1976年‐1980年
- Assistant/Associate Professor, Texas Christian University
- 1981年‐1985年
- Associate Professor, Dept. of Histology,
University of Lund, Lund, Sweden - 1985年‐1988年
- Associate Professor, Dept. of Neurosciences, University of
California, San Diego - 1988年‐現在
- Professor, Dept. of Neurosciences, University of California,
San Diego - 1995年‐現在
- Professor, Laboratory of Genetics, The Salk Institute
for Biological Studies, La Jolla, CA - (2008年10月現在)
坂口 志文 博士
授賞研究テーマ
制御性T細胞の発見と免疫疾患における意義の解明
正常な免疫系は外来異物に反応しますが、正常な自己組織には反応しません。この自己と非自己を識別する免疫自己寛容の維持機構の解明は、免疫学、医学生物学の重要課題です。特に、免疫抑制機能に特化したT 細胞が存在するか否かについては長年議論がありました。坂口志文博士は、1980 年代に、正常動物から特定のT 細胞を除去すると自己免疫疾患が発症することを示し、その機序の解明に取り組んだ結果、自己免疫を抑制する特異なT細胞を発見されました。この細胞は、のちに制御性T 細胞(Regulatory T cell)として確立され、免疫自己寛容の維持に重要な役割を果たすことが明らかになりました。坂口博士は、制御性T 細胞の発見に続き、自己免疫病・アレルギーを特徴とするヒト遺伝性免疫疾患IPEX 症候群の原因遺伝子であるFoxP3 が制御性T 細胞のマスター調節遺伝子であることを発見されました。さらに制御性T細胞による免疫抑制の分子機構の解明および自己免疫疾患・移植・がんなどの免疫関連疾患における制御性T 細胞の意義の解明に一貫して多大な貢献をされました。現在、制御性T 細胞は、免疫制御の新しい標的として、世界中で活発な研究が行われています。
略歴
<学歴・職歴>
- 1976年3月
- 京都大学医学部医学科卒業
- 1976年5月
- 医師免許取得
- 1976年4月
- 京都大学大学院医学研究科入学
- 1977年10月
- 愛知県癌センター研究所実験病理部門研究生
- 1980年4月
- 京都大学医学部免疫研究施設及び附属病院輸血部医員
- 1983年9月
- 京都大学医学部博士号取得
- 1983年9月
- Johns Hopkins 大学客員研究員
- 1987年7月
- Stanford 大学客員研究員
- 1989年7月
- Scripps 研究所免疫学部助教授
- 1992年10月
- 新技術事業団「さきがけ21研究」研究員
- 1995年4月
- (財)東京都老人総合研究所免疫病理部門部門長
- 1999年2月‐現在
- 京都大学再生医科学研究所生体機能調節学分野教授
- 2007年10月‐現在
- 京都大学再生医科学研究所・所長
- 2007年12月‐現在
- 大阪大学免疫学フロンティア研究センター